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インドラ・ジャトラ
2020年9月1日

ティージの余韻に浸るまもなく、インドラ・ジャトラ(Indra Jatra)がやってきます。カトマンズ盆地の先住民であるネワール民族(Newari)、特に旧カンティプール周辺に暮らしてきた者にとっては極めて重要な意味を持つ、ネワール文化の表の華ともいえるこの祭りは、王宮周辺を中心に8日間も続く祭祀です。ティージ(Teej)を皮切りに、インドラ・ジャトラで一気に最高潮に達したカトマンズの祭祀ムードは、このあとひと月ばかり冷めることなく次々と祭事を繰り返しながら冬に向かって突き進んでいきます。

ハヌマン・ドゥカ(Hanuman Dhoka、ハヌマン神の門)の旧王宮の前に広がるバサンタプール(Basantapur)広場に、松の木の御柱が運び込まれたら、それがインドラ・ジャトラ開始のサインです。祭りの前の準備からすでに祭り、という光景は日本のあちらこちらでも見られると聞きますが、インドラ・ジャトラも同じです。

広場に運び込まれて寝かされていた御柱が垂直に立てられる儀式には、何千人という地元民が集まり、広場も周りの家屋も屋上も寺院の縁台も、起ち上がっていく御柱をひと目見ようという人で埋め尽くされます。ニューロード付近での買い物に行こうものなら、朝から一日かかっても目的のお店にたどり着けませんし、やっと着いたら儀式見物でお休みだった、というのもよく聞く話。帰ってくるのにも半日がかりになるので、この日は御柱の儀式を見るのでなければ行かない方が賢明でしょう。

インドラ・ジャトラの山車は、神に捧げ、王を祝福して国を守るための聖車とされ、最も重要な点は、この山車に国の守護神たる生き神・クマリを乗せ、旧王宮周辺の市街地を引いて回るという宗教的行為でしょう。普段は館の中で祈りを捧げているクマリが、インドラ・ジャトラの日だけはハレの場に出て、その僥倖を旧市街中に施して回るわけです。

Living Goddess Kumari being carried on a palanquin during the Indra Jatra festival in Kathmandu, Nepal.

この儀礼的意味合いに内奥で呼応するように、祭祀の間は連日、ラケ(Lakhay)の名で知られるおどろおどろしい大きな仮面をつけて伝承祭祀衣装を身にまとった歌舞方が路上に飛び出して、伝統の型を乱舞します。その周りで伝統打楽器が打ち鳴らされ、地元民は宗教的陶酔感のなかで山車とクマリを少しでも我が方に近づけようと、曳き棒を奪い合い、引きずりあいます。現在では観光客の利便や安全を考慮して激しい奪い合いは見られないようになっていますが、それでも先住民ネワールの持つ長い歴史と伝承信仰史観の奥の奥が垣間見える、極めて興味深い光景が眼前と耳内に広がります。

ちなみにインドラ(Indra)は「神の中の神」「神の王」とされ、日本では漢訳「帝釈天」の名で知られているヒンズーの大神です。インドラ・ジャトラは、地上に茂るあるハーブを求めて、この大神が人間に姿を変えてこの世に降りたった、という伝説をとらえて、この日を国の守護の日として祝うというのが、もともとの意味です。

8日間の祭祀中、カトマンズの旧王宮広場では至るところでオイルろうそくが灯され、クマリの館の前にある舞台では、ヴィシュヌ神が人の姿に化身したとされる十の姿をつぎつぎに見せる仮装劇などが奉納されています。

クマリの乗る山車のほか、ガネーシャ神(Ganesh)とバイラブ神(Bhairav)を乗せた少し小さめの別の山車も二台出され、大山車とは別の動きをしているのも見ることができます。

ビクラム暦(Bikram Sambat)と呼ばれる太陽太陰暦を採用しているネパールですが、こうした祭祀事例は常に月や星の動きを観測、計算して実施日が決められます。ネパールの祝祭日が年によって変わるのはこれが理由で、日本でいう陰陽道や六曜(大安等)と同じ思想が根底にあります。

インドラ・ジャトラは最終日が必ず満月の日になるように設定(満月から逆算して8日間)されますが、守護神クマリの選定条件に「満月の日に生まれたネワールの女子」という項目があるため、最終日は「クマリの日」ということもできます。これを知る地元民は最終日前日の午後からクマリの館に詰めかけ、もっとも霊験あらたかなタイミングでのクマリの姿を目に焼き付けようとします。

Living Goddess Kumari takes a peek out of the window of one of the historical sites in Kathmandu Durbar Square, Nepal.

インドラ・ジャトラは、高々と屹立していたシンボル・御柱を下ろす儀式で締めくくられます。

起ち上がる御柱、山車に処女神クマリを乗せての熱狂、そして最後に下ろされる御柱。ネワール密教の根源やカーマ・スートラの存在を思うとき、この祭祀事例が大いなる生へのパワーを集積した爆発的ミサであることがわかります。あらゆる物事への執着を「煩悩」とし、「無」になることを目指す仏教思想とは対極のインドラ・ジャトラ。御柱の慎重な選定過程や、まだ佳境に入っていない御柱建立日の湧き上がる熱気などは、ヒマラヤの盆地内で一大文化勢力を誇ってきたネワール民族が内に秘めた、強烈なリビドーの顕在形といえるでしょう。

そうした難しい背景を気にしなくても、カトマンズの中心・旧王宮近辺で行われる熱狂的なお祭りで、めったに見られないクマリとの邂逅を求め、珍しいお面をつけて踊る道化を撮影し、ネワール式の山車を見物し、と、この期間でなければ見ることができない見どころ満載なのがインドラ・ジャトラです。お祭りの時しか食べられないメニューもあちらこちらで売られています。気軽に見物においでてはいかがでしょうか。

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